紳士の迷走記

靴、時計、スーツ…欲望と徒然なるままに…

時計の選択 Part5(最終章) IWC MARK XII

待ち焦がれた日がやってきた!

今日から相棒となるマーク12がはるばるドイツからやって来た。

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素敵😍❣️これがIWC マーク12。直径36mmで厚さ10mmというだけあって小さく薄く、そして軽い!以前保有していたGOは直径42mmで厚み13mm近くあり、重量感もあったので対照的な印象を受けた。

ケースには小さな打痕や傷は幾つかあったが全体的にかなり綺麗だ。今までのオーナー達が丁寧に使っていたのだと思う。感謝しかない。

お魚リューズも初めて見たが、ししゃものようで可愛らしい。愛着が湧く気持ちがわかる気がした。革ベルトは恐らくFlucoのConsul。柔らかく着け心地が良い。

鑑定書と共に真贋証明もされているので安心だ。人生初のねじ込み式リューズに少し苦戦しつつ無事カレンダーと時刻合わせを完了した。巷で言われるリューズを押し込んだ時の針飛びは無かった。精度も今のところ悪くない(日差:+4秒)。きちんと整備されたことが窺え、Zeitauktionのレベルの高さを実感した。そしてドキドキしながら装着してみた。

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細腕なのでやはりこれくらいのサイズがしっくりくる。現物を見ずに買ったので一抹に不安があったがそれも解消された。あぁ、これこそ求めていた時計だ。

マーク12はマーク11を民生用に改変して1994年に発売されたモデルだが、軟鉄製インナーケースを備え、50,000A/mの対磁性と耐荷重30Gのスペックを誇る。風防も表面が丸みを帯びていて気圧の変化に耐えられる設計になっている。しかもムーブメントはジャガールクルトのCal.889/2をベースにしたCal.884/2。パワーリザーブは40時間程度らしいが、GOのパワーリザーブも同じくらいだったので、この辺りは気にならない。日本での発売当時は35万円だったようで、現代の感覚では信じられないくらい安く感じる。

今日も一日マーク12を装着して過ごしていたが、とても心地よく安心感がある。Es ist wirklich bequem✨左腕の上にそっと寄り添って苦楽を共に過ごす相棒的存在が腕時計と思う。かなり無理をした買い物であったが、とても満足している。

こうして、腕時計という相棒を見つける旅は終わった。これからは相棒との想い出を紡いでいきたい。

 

 

 

 

時計の選択 Part4

IWCマーク12の在庫を海外も視野に調べたところ、意外にも国内と同等かやや安いくらいの価格帯(70万〜100万円)の個体が多かった。マーク12は意外にも穴かもしれない。1ユーロ150円台の円安なので、為替を考慮すると現地通貨では日本より割安という事になる。有名なC◯rono24では70万円からあったが、良い個体が見つからなかったし、そもそも数が少なかった。その他ネットで見つけたドイツの某宝石店に直接問合せをしたり、しばらく個体探しの日々が続いた。

そんなある日、Z◯ITAUKTIONというC◯rono24の子会社を知った。Z◯ITAUKTIONはドイツのヒェムニッツに所在する欧州最大の中古時計ディーラーで、自社内に時計技師のチームを有し徹底したQC管理の元で中古の時計を販売している。探していたマーク12が「In stock」の表示だった。もちろん、在庫は1つ。

個体の状態は良く、エンジンであるキャリバー884/2も問題がなさそうだ。真贋保証もついていた。値段は予算オーバーだが、収支のシミュレーションをして何とか首の皮一枚繋がりそうだ。先日のマーク15の失敗を繰り返さないために、勇気を出して即注文した。夜中の2時だった。PayPalで前払いし、その後メールでやり取りをして無事ヒェムニッツから発送された。購入から2日以内の発送だったのでカスタマーサービスも良かった。あとは現品を受け取るだけ。マーク12は明日到着予定。とても楽しみだ。

参考までに商品ページを載せておく。

https://www.zeitauktion.com/en/IWC-MARK-XII-STEEL-AUTOMATIC-MEN-S-WATCH-IW3241-2300621

正直、マーク12という選択が、そしてこの買い方が正解だったかどうかは分からない。明日になれば、分かるだろう。ぶっちゃけ支出だけ見れば明らかに損をしており愚行と言える。でも頑張った買い物なので、幸せな時間が続けば良いなと思う。仮にマーク12のリセールバリューが上がろうとも、売らない。故にもう時計を買い替える事も無いと思うが、紆余曲折があって今回の買い物に至った経緯は反省の意を込めて赤裸々に綴った。次回はインプレッションと本タイトルのまとめとして、最終パートにしたい。

 

つづく

 

 

時計の選択 Part3

IWC マーク12とマーク15の時計探しが始まった。マーク12は価格が100万円近くまで高騰しており落胆したが、マーク15は50万円前後からあるようだ。調べてすぐに銀座R◯sinさんでマーク15の在庫を見つけた。革ベルトで付属品無しで53万円。OHも当月終えているし、文字盤やケースの状態も良さそう。買取の依頼をして、翌日店舗に持ち込む手筈となった。久しぶりにこの日の夜はよく眠れた。

翌日、意気揚々と支度をしているとお店からメールが届いた。

「ご検討されていたマーク15がネット注文により先程売り切れました。」

目の前が真っ白になったが、こういう事が起きるのが時計の世界だ。せっかく妻から外出の許可が出たというのに、残念。。。

本当に欲しい時計は現品を見ず在庫がある内に確保するのが正解だと痛感した。GOの売却はもう避けられないし、お店の査定額も納得はしないが了承したので暗い気持ちで銀座に向かった。人気のないモデルはどんなに良い時計でも安く買い叩かれる。それも実感させられた。高価な機械式腕時計は、投資目的でないにしても人気モデルを選択する方が賢い選択と思った。

生後1ヶ月半なので都心への外出は貴重だ。その貴重な時間を時計の売却に費やすのは切なかった。しかもほぼ買値の半値での買取。下手を打ったが過ぎ去るは及ばざるが如し。前を向くしかない。

少し早く着いたので新橋でたい焼きを食べて一呼吸置いてからお店に向かった。

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銀座R◯sinさんの対応はメールでのやり取りと同様にとても丁寧だった。「綺麗に使われてますね。精度も問題ないのでお伝えした上限額での買取になります。」

こうしてGOは旅立っていった。

GOは悪くない。全ては我慢出来なかった自分のせいだから。

その後もマーク15の人気は凄まじく、入荷されるとすぐ売り切れる毎日だった。一部のブレスモデルはマーク12よりも高い値段で取引されていた。無論、状態が良くない個体はいつまでも掲載されていた。私観だが、長く在庫されている個体は注意が必要と思う。不人気モデルか、或いは何か欠陥を抱えている場合が多いからだ。小生が購入したGOは半年以上在庫されており、棚卸回転率の高いお店で何故これほど長く売れ残っていたのかをまず考えるべきだった。でも、こういう失敗は次に繋げればいいのだ。

マーク15の人気の理由は実用性の高さ、シンプルで完成されたデザイン(マーク16以降はビックパイロットウォッチとのデザイン統合が見られ、より高級志向になった印象。)、ETAムーブが載っている安心感とメンテのしやすさが挙げられると思う。質実剛健という言葉がピッタリな個体で魅力的だ。ただ、あまりにも加熱した人気を見て天邪鬼な小生はマーク15に冷めてしまった。

そして日本だけでは無く世界に目を向けて時計を探そうと思った。ブティックや某並行店での苦い経験はむしろ日本に見切りをつける理由になった。

そしてついに出会った。ようやく暗闇のトンネルから抜け出した気持ちになった。

 

つづく

時計の選択 Part2

前回は、機械式時計を購入するまでの経緯を綴った。本望はマーク20だったが心が折れてしまい、グラスヒュッテオリジナルのシックスティーズ パノラマデイトを中野の某時計店で購入した。

ところが購入時の手続きから驚きの連続だった。1つは国際保証書の上書き。保証書には別の正規店のスタンプが押されていてその他は空欄(いわゆるオープンギャラ)だったが、その場で担当者が保証開始日を含め記入していた。そのお店の保証書ではなく、他の正規店名義の保証書なのでそれって大丈夫なの?と思ったが、何も言えなかった。帰宅後にその正規店をネットで調べるとオーナーは中華系で既に閉店していたことが分かった。。。2つ目は、箱の経年劣化。新品のはずなのに中の時計ケースが加水分解を起こしてボロボロと剥がれていた。。。並行品はこういう事例がよくあるのか不明だが、とても残念だった。特に保証書の部分はコンプラ的にも問題があるように感じた。

呆気に取られつつ無事支払いも終わったが、モヤモヤした気持ちで帰路に着いた。

家でもモヤモヤとした気持ちが残り、「本当にこれで良かったのか」と後悔の念に駆られた。上の2つから言える事、それはこの時計は確かに"新品・未使用品"ではあるが製造からそれなりに年月が経過している、という事だった。加水分解の状況から恐らく在庫期間は少なくとも3〜5年あったと思う。並行輸入品の新品は、新品であって新品ではないことをその時に身をもって理解した。新古品という矛盾した存在だと思った。

ただ、例えその推察が正しかったとしても時計そのものには満足していた。60年代のレトロな外観もサファイアクリスタルの裏蓋から覗くCal.39のムーブメントも素晴らしかったし不満はゼロだった。強いて言うならサイズ感がやはり大きかった事(装着感)と思う。

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↑夏に向けてHermann Staibのミラネーゼブレスもドイツから買い付けた。

GW突入と共に育休に入り、赤ちゃんのお世話と家事に専念する日々が始まった。いつもこの子を身につけて日々奮闘しつつ、夜になると時計を調べている自分がいた。素晴らしい時計が側にいるのに、なんて薄情だろうか。この子を買って感じたことは、時計との付き合いは恋愛に似ているということ。気付けば時計は恋人に近い存在になっていた。

でも自分には嘘をつけなかった。IWCへの未練が消えなかった。毎晩遅い時で夜中の3時まで公式サイトや時計のレビュー動画、時計ブログ、情報サイト、時計専門店の在庫やオークションサイトを眺める日が続いた。ただ、目的もなく時計を調べる毎日にだんだん疲れてしまい、この気持ちをどうにかしなければと思い始めた。

しかし、既に80万円近いキャッシュを払っておりもう一本買うのは家計的に無理だった(妻の激怒も買うだろう)。また、個人的に無金利でもローンは反対であり、お金の使い方は身の丈に合う必要がある、という考えなのでどうするべきか悩む毎日を送った。辿り着いた結論は、泣く泣くGOを売却して本当に満足いく時計を吟味して買う事だった。これをもってモヤモヤした気持ちに終止符を打ちたかった。正直、ものすごく辛い決断だった。

この時点で新品へのこだわりは消えていた。新品である事よりも、①きちんとメンテナンスされていること(直近でOH済み)、②真贋鑑定がされていること、そして③外装の状態が良いもの(研磨痩せや傷が少ない)。この3つが担保されていれば、あとはPart1でも記したブランドの理念への共感や実用性、そして価格との折り合いをどうするかだった。付属品の類はどうでも良かった。フリマでオープンの保証書や箱など付属品も売られているので、後から付属品が揃えられた個体である可能性もあるからだ。時計の世界は何でもありで、中古車の世界に似ていると思った。

そしてもう一つ、どのお店で買うかも重要だと思った。例え有名店であっても落とし穴はあるし、きちんとした時計専門店が望ましい。

マーク20には戻らないと心に決めていたのもあり、IWCに代わる時計も探した。STOWA, Laco, Sinn, Damasko, Wempe, Tutima…

どのブランドも素晴らしいが、響かなかった。やはり本心はIWCが一番好きで自分に嘘をついてはいけないと思った。特にマーク12とマーク15は以前からの憧れだった。マーク20を当初買おうと思ったのも中古という選択肢がなかったからだ。以前中古車で痛い目にあったのもあり、中古品に対して変な偏見があったのだと思う。でも時計を所有した事と時計を調べる中で考え方が変わった。むしろ中古にこそ解があると思った。マーク12,15の在庫探しが始まった。

 

つづく

 

 

時計の選択 Part1

長年検討に検討を重ね続けて尚、手を出せなかったのが機械式腕時計である。そして、一念発起してある個体を購入したが、別のモデルを数ヶ月後に買い直すという愚行を犯してしまった。自戒の意も込めて赤裸々に、記録に残そうと思う。

 

スーツや靴であれば50万円も出せば最高級の品が手に入る。でも機械式腕時計ともなれば、50万円ではエントリークラスしか手が届かない。そして腕時計の新品価格は昨今の度重なる値上げで、ますます一般人の手に届きにくくなっている。

紳士を語るのであれば、腕時計は必須のアイテムだ。しかしこのように高価であるから何を買うべきか丸3年悩んだ。自分の中での拘りは3つあり、①新品であること(後に考えが変わる)、②そのブランドの歴史や理念に共感すること、③実用的であること(ケースはSS、最低6m防水、耐磁性)だった。

その時々の気持ちでコロコロと欲しい時計が変わっていったが、最終的にはIWCマーク20に落ち着いた。シンプルなデザインにベルトのクイックチェンジシステム、シリコン製ヒゲゼンマイ搭載による耐磁性、IWCとマークシリーズの歴史が決め手だった。ただ、ブティックで正規品を買うか並行品を買うか、そしてどのタイミングで買うか、悩む日々が続いた。

そして人生の転機が訪れた。結婚し、子宝に恵まれたのだ。高級機械式時計を買うにはまさにベストタイミング!その一方で独身時代のように好き勝手に出費もできなくなるので、買うならラストチャンスだった。決断を迫られた。

そして緊張しながらIWC銀◯ブティックの門戸を叩いた。店内は大盛況で男性のお客さんが多かった。ブティックに初めて入ったので、待っている間は人間観察に勤しんだ。延々と店員さんに質問を続ける人から職場の同僚と思しき人達に囲まれて買わされている人、後から入ってきた全身モンクレールのおじさんがソファに陣取るなど、カオスな状態。そして待つ事40分、ついに呼ばれた。「えっっと、マーク20の黒文字盤、ブレス仕様を購入しに来ました。(汗)」

残念ながらマーク20は大人気で受注に生産が追いついておらず、在庫がないとのこと。腹を括ってマーク20を予約した。

ところがその後4ヶ月、待てど暮らせど納品の連絡が来ない。毎月ブティックに足を運んで状況を聞いたが、納品未定の回答のみ。特に詳細な説明もしてもらえず、いつの間にか価格改訂もされていた。せっかく行っても接客時間はいつも2分以内だった。一番短い時で10秒。。。小生のような陰キャ&一見さんは相手にしないお店なのかなと勝手に拗ねてしまい、そのうち行かなくなった。(実際はこういう事例は少なく、商談中にコーヒーを出してもらえたり、ブティックのサービスは素晴らしいという口コミが多いので誤解無きよう。)

そうこうするうちに、妻の陣痛が始まり無事元気な男の子を出産した。時計は間に合わなかった。

入院中はほぼ毎日お見舞いと赤ちゃんに会いに病院に行き、退院後は育児と家事、仕事の3足の草鞋を履く日々が始まった。これが結構しんどかった。

予約をキャンセルして他の時計を選ぶべきか真剣に悩んだ。SNSでレビューや生の声を調べるとネガティブな投稿も散見された(特に精度と針飛び)。そして一部の顧客には革ベルトの個体を先に案内しステンレスベルトが入荷したら納品するという対応も取っていたらしい。(革ベルトは遅延のお詫びとしてサービスしていた。)正直もし革ベルトの個体があるのなら、何度も入荷の確認をしているのだから提案くらいしてくれても良いのにと思った。少し寂しい気持ちになった。

通常の精神状態であれば我慢も出来ただろうが、ストレスもあって心が折れてしまった。

そんな中で白羽の矢がたったのはGOのシックスティーズ パノラマデイトだった。特徴的なフォントと切削によるインデックス、パノラマデイトという独自技術に加えて裏スケで美しいムーブメントが一望できる素晴らしい個体。懸念は42mmというサイズと装着感と防水性、磁気帯び対策だった。また、半年以上も前に並行輸入店に入荷してそれからずっと動いていない個体だった。この時計は最初に記した拘りから逸脱しており、検討から過去外した時計だった。それを土台に上げたのだから少し自暴自棄になっていたと思う。あるいは、この時は妥協できると思ったのかもしれない。

都心に出られるチャンスも少ないため、取引先での打合せ後、中野の並行輸入店に寄り道して試着した。装着感とファーストインプレッションは大変良かった。腕に乗せて気持ちはGOに大きく傾いた。

そして勢いそのままに、数日後「えいや」で現金一括払いで購入した。当然マーク20はキャンセルした。

 

ところが、それで終わりとはならなかった。

 

つづく